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2017年06月27日
火曜日
文化的神経ガス(2017年6月26日) ( 教室通信 )
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もう20年以上昔のこと、自然豊かな山里の道を歩いていたら、一軒の茅葺屋根の家からけたたましい音が聞こえてきました。ふと見ると、それはテレビのバラエティ番組か歌番組の騒々しい声でした。
そのときは、快い空気とすばらしい景観に浸っていた気持ちを台無しにされたような違和感と同時に、ぼくにはまったく興味のない都会文化も、淡々とした日常を送っているこの家の人にとっては、あこがれなのかもしれないと思ったものでした。そして、この地方の味わいのある方言も“標準語”に毒され、自然の中に溶け込んだ生活習慣も、都会文化へのあこがれの中に消えてゆくのかもしれないと漠然と考えていました。さらに、便利でラクな都会生活の恩恵をうけながら、そんな身勝手なことを考えている自分自身にも気がつきました。
先日、UCLAのダニエル君と話していたとき“Cultural Nerve Gas”(文化的神経ガス)ということばが出てきました。神経ガスとは、自覚症状がないままに神経を侵され、気がついたときには体が全く動かない状態になり死亡する、という恐ろしい毒ガスです。アラスカなどの英語圏に暮らす先住民たちが、英語でのテレビやラジオ番組に触れることで、自覚症状がないまま母語を忘れ去っていってしまうように、少数者の言語や文化が消滅してしまうことを“Cultural Nerve Gas”と表現するようです。
その話をしていたときに、20年前の記憶がよみがえったというわけでした。
その当時と比べてテレビ番組の内容も変化し、さらにネット情報の洪水は、確実にぼくたちの言葉も生活のしかたも大きく変えているように思います。そして、なによりも恐ろしいことは誤った情報や語法も、繰り返し見聞することで“社会の常識”になっていくことです。
とりわけ、暮らしぶりもことばづかいも感覚も、それぞれの地方ごとに異なるだけでなく、個人個人も育ってきた背景が違うのにもかかわらず、大量の情報によって均質化されていくことで、たがいの違いや多様性を認め合わない“不寛容社会”が進んでいること、そして、その結果として社会が硬直して滅びに向かうのではないか、これがまさに“文化的神経ガス”です。
じつは、この現象の深刻さは日本だけではなく世界でも大きな問題になっています。消えていった言語、絶滅していった文化は、まさに近代の“文化的神経ガス”の結果だと言われています。
毎月第3土曜日に開いている「原点の会」(HP左下参照)の次回テーマは「メディアと私たち」です。
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