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TOP教室通信浦和の水(2008年8月23日)

2009年07月30日 木曜日 浦和の水(2008年8月23日)     ( 教室通信 )

塾の庭の中央に、板でふたがしてある古井戸があるのに気がついている人は多いでしょう。使わなくなって、もう50年近くなります。
 今年のように暑かった数十年前のある夏の日の情景を思い出します。都内からやってきた親類の一人が、大汗をかきながらわが家に着くと、いきなり庭先の井戸の樋に口を持っていき、顔いっぱいに水しぶきを浴びながらゴクゴクッとひとしきりのどを鳴らしたあと、びしょぬれのままで破顔一笑「浦和の水はやっぱりうまいなあ」と言ったものです。
 冬には雑巾しぼりの手をやさしい温もりで包み、夏の朝、網に入れたスイカを井戸の底に下ろすと、昼にはキリリと冷えた八つ割りが食卓にのる。口に含めば甘露、水割りにすれば芳醇(これは呑ん兵衛だった父の言)、わが家を訪れる友人知人たちは、異口同音に「浦和の水はうまい」と言い、なかには水筒に詰めて帰る人までいました。
 こうした井戸は隣近所どこの家にもあり、戸口を開けると、薄暗い小さな土間いっぱいを井戸が占領していた前の家、日の当たる井戸屋形で洗濯をするお隣のお姉さんの手元をじっと見つめていた幼い日の記憶、大きな鯉が泳いでいた井戸の底、どれも懐かしい井戸にまつわる光景です。

 浦和地域は約30パーセントが何層もの火山灰質粘土層と関東ローム層が堆積した台地の上にあり、その地下深く豊かな水量に恵まれた浦和水脈がありました。埼玉大付属小近くの県南水道の揚水タンクからの配水が本格的になってきた昭和30年代初頭にはどの家にも水道が引かれ、それとともに井戸を使うことも少なくなってきました。 わが家の井戸もそのころは、庭の水遣りなどに使うだけになっていました。県南水道もかなり以前から荒川からの取水が主となり、地下水はほとんどないというのに、不思議なことにわが家の古い水道管からは、20年前まで、冬は温かく夏に冷たい、あの「浦和の水」の名残りが出ていました。井戸は、もう使うことはありませんが、埋めると危険だと聞いているのと、なんとなくの風情を惜しんで、そのままにしてあります。

 

 

すずき学院 学習教室

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